toieeLab ニュースレター
メタ探求型学習 x 記憶戦略 = 最強の学習方法
どうすれば、もっと良く学べるのか?

こんにちは
toiee Lab 亀田です。

まずは、前回のメールの内容を思い出してください。どんな内容だったでしょうか?自分なりに内容を思い出す努力をしてみてください。

これを「想起」と言います。

想起(詳しくは後で説明します)をすることで、記憶は強化されます。

  • 想起とは何か?
  • 想起ではないものは、何か?

を知るだけでも、

  • WordPress関連の様々な知識、スキルをマスターするにも
  • 子供の教育にも
  • マーケティングを学ぶにしても

画期的な変化を起こすことができます。

なお、科学的な検証で合格したことを「エビデンスがある」や単に「エビデンス」と言います。以下、エビデンスと書きます。

60歳で医師になった人の学習方法

コンビニに寄ったら「賢い人の勉強法」という雑誌が置いてありました(プレジデント社)。記事の1つに「50歳になって、医師を目指して勉強し始め、60歳で医師になった方」の勉強法が取り上げられていました。

以下に紹介しますが、「エビデンスに基づいて議論」すると、間違っている部分が多々あります。どこだと思いますか?

予想を立ててみてください。なお、6つの言葉の意味は深く理解できていなくても、ヒントにしてみてください。

  • 想起練習 ・・・ 自分の脳の中から、引っ張り出す
  • 間隔練習 ・・・ 忘れる程度に、間を開ける
  • 交互練習 ・・・ 違うものを混ぜながら学ぶ、全部わかる前に次に行く
  • 多様練習 ・・・ 1つの原則や、技術を多様なコンテキストで練習する
  • 省察 ・・・ 自問自答、振り返りする
  • 精緻化 ・・・ 自分の言葉で説明する

(わかりやすいように、書き換えています)
① 最初はカードに重要な用語や意味を書いて隙間時間で見るようにしていましたが、可能な限り「五感」を使う勉強法に切り替えました。

② 具体的には、朝3時に起きて「今日はこの範囲」と決めて、参考書をもとに自分なりに噛み砕いて理解した上で文章に起こします。それをボイスレコーダーに録音します。

③ その後、午後4時から1時間かけて、先程録音した内容を聴きながら、公園まで歩きます。

④ 公園では今日の範囲ではなく、明日の範囲を予習する勉強をします。1時間ほど勉強します。

⑤ 帰りは、ボイスレコーダーの内容を2倍速にして聴きながら歩いて帰宅します

この方は、医学部に合格した後は「忙しすぎて、ボイスレコーダーを使った勉強法」ができなかったそうです。仕方がないので、

⑥ 授業の要点をまとめたノートを作る

⑦ 大事なところだけ、赤ペンで書く

⑧ 赤いカバーをかけて見えなくして、覚える

いわゆる「暗記ノート」を使ったそうです。そのことを振り返って、

暗記ノートよりも、ボイスレコーダー式で学んだことの方が、鮮明に覚えている

とおしゃっていました。

この中で「やっても、やらなくても変わらない」行動は、どれだと思いますか?あるいは、ちょっとだけやり方を変えるだけで、「劇的(長期で見ると6倍は違う)」な違いが発生する場所は、どこだと思いますか?

多くの研究者によって、様々な実験方法、年齢、年代、課題によって、何度も、何度も検証された「エビデンス」を持つ結論から考えると、はっきりと示すことができます。

「想起」しないと、記憶に定着しない

想起を一言で説明すると「自分の脳の中から、アウトプットする」ことです。

例えば、何かを説明するとき、本を開いて、チラ見しながら「人に説明する」行為は、想起とは言いません。これは、「インプット → 短期記憶 → アウトプット」をしていることになります。

研究の結果では「再読」は、ほとんど記憶の向上につながらないことがわかっています。何度も、何度も、読み返しても、記憶は増えません。これは「インプット → 短期記憶」をしているだけだからです。

一方で、想起とは「引っ張り出そう」とする行為なので、長期記憶に入りかかっているもの、入っているもの、既に入っているものと短期記憶に残っているものを統合するプロセスになります。

例えば、本を開かず 、自分が記憶している断片をつなぎ合わせて、説明すれば「想起」になります。

何かを記憶したかったら 「必ず、想起」という行為 を行うことです。

例えば、以下のような方法を行います。

  • 何もみずに、図解してみる
  • 何もみずに、人に説明してみる
  • 何もみずに、設定を変更してみる

など「想起」を行うように行動することで、記憶に定着します。

間隔練習とは何か?

記憶は「忘れた頃に想起する」ことが大切です。

先のメールで説明したように、学んだ直後にテスト(想起)しても、短期記憶から引っ張り出しているだけです。長期記憶に入れるには、時間を空けて「想起」が大切です。

なお、解明されていないのですが、「短期記憶」に入ったものは、これまでの経験や状況、情動の強弱などの条件に従って「統合プロセス」によって長期記憶に移行します。この無意識下で行われる「統合プロセスを待ってあげる」ことが大切です。

面白いことに「統合プロセス中」は、記憶が減衰していくのですが、4日ほど経つと「統合プロセスが終了」し、思い出しやすくなります。

エビングハウスの忘却曲線では、右肩下がり(ひたすら忘れていく)ように思われていますが(ランダムな数字だから)、意味のあること、つまり学びたくて学んでいるものについては、 4日後ぐらいに復習すると、よく思い出す ということです。

間隔を開けて「統合プロセス後」に、思い出そうと脳に汗をかくことで、記憶が定着しやすくなります。

これを「間隔練習」と言います。

医師になった人の学び方で「良いところ」とは?

6つのポイントの2つだけを使って、先ほどの医師の事例の「間違い」について議論をしてみましょう。

最も記憶にインパクトを与えているのは、これです。

② 具体的には、朝3時に起きて「今日はこの範囲」と決めて、参考書をもとに自分なりに噛み砕いて理解した上で文章に起こします。それをボイスレコーダーに録音します。

自分なりにまとめ直すというのは、過去の記憶(長期記憶)と関連づけを作り出す作業です。従って「想起」になっています。

また精緻化と呼ばれる作業でもあります。この作業は、前日の記憶をベースに行っています。

④ 公園では今日の範囲ではなく、明日の範囲を予習する勉強をします。1時間ほど勉強します。

つまり、最も記憶に寄与しているのは、④→② という作業です。④でインプットをし、間隔を開ける。

1日ですが、この方は公務員の仕事をされていたので、朝の学習については、完全に意識からは外れています。なので、十分な時間が空いていると言っても良いでしょう。

間違っているところ、効果が薄いところは?

① 最初はカードに重要な用語や意味を書いて隙間時間で見るようにしていましたが、可能な限り「五感」を使う勉強法に切り替えました。

五感を使っているのではなく「想起」と「精緻化」と「間隔学習」をしているだけです。五感を使うを行うなら、もっと工夫が必要だと思います。

そして、五感の使い方が、一つ上の視点で見ると「6つの要素のいくつか」を実現していれば、記憶に残りやすくなります。

以下は、あまり意味がないでしょう。

③ その後、午後4時から1時間かけて、先程録音した内容を聴きながら、公園まで歩きます。

直前に録音したものを聞き直すのは「再読」です。全く無意味とは言いませんが、それほどインパクトを与えません。

では、どうしたらいいか?

「間隔学習」をすると良いかもしれません。例えば、先に録音した内容ではなく「4日前」の録音を聴きながら、「これ覚えてないなー、これは覚えているなー」と自分をテストすると良いかもしれません。

あるいは②の録音するつもりで文章に起こして、実際は録音しないことです。録音するかわりに、4日後にテストするクイズを録音しておいて、歩きながらクイズを聞くと良いかもしれません。

⑤ 帰りは、ボイスレコーダーの内容を2倍速にして聴きながら歩いて帰宅します

これは「交互練習」の要素が少しだけ入っています。先に学んだ内容(明日、学ぶ予定の場所を学ぶ)の後に、今日の内容を学ぶことになっています。

でも、あまり時間が空いていないので、別のことをしたら良いかと思います。

例えば、8日前の録音したクイズを読むことや、関連する全く違う知識や情報をインプットする時間にするなど、違うことをやれば良いと思います。

学生時代の学び方について

なお、試験に合格し医大生として学んでいるときのものを議論すれば、

⑥ 授業の要点をまとめたノートを作る

「要点をまとめる」というのが、想起になります。ただし、参考書や講義資料をみながらまとめるよりは、何もみずまとめてみて、足りないと思うところを調べて、まとめ直す方が効果的です。

つまり「想起」をしっかり行うように工夫するべきです。

⑦ 大事なところだけ、赤ペンで書く

記事では「消せるボールペンが重宝した」と書いてあるので、おそらくは講義ノートは「黒」でつけていて、消して「赤の字」で書いていたのかもしれません。これは、それほど有効な方法ではありません。

⑧ 赤いカバーをかけて見えなくして、覚える

テストをしているのですが、タイミングが大事です。間隔を開けること、さらには「過去のものも、まとめて自己テスト」することが大切です。でも、講義のまとめをみて、穴埋めをするのでは、あまり効果が見込めません。

自分で「ここを忘れそう!」とか「ここを勘違いしてたら、間違うぞ」というテスト問題を作って、時間を開けてテストすることが、大きな効果を生み出します。

錯覚について

さて、最後に「錯覚」について考えてみましょう。

暗記ノートよりも、ボイスレコーダー式で学んだことの方が、鮮明に覚えている

というコメントが印象的でした。しかし、科学的証拠から議論すると、ボイスレコーダーに録音して、再読(再聴)していることは、ほとんど関係はありません。

「前日に参考書を読んで、次の日にボイスレコーダーに吹き込むオリジナル解説を作る」という行為が記憶に影響していることに気づかず、「レコーダーで再読」が良いと思い込んでいるようです。

なお、真偽を確かめるのであれば「再読」をやめて、自己テストをしてみれば、はっきりします。なお、2週間後に「自己テスト」をすると、そのテスト自体が記憶を強化してくれます。

真偽を確かめようとすると、そのおかげで記憶力が高まるという、嬉しい誤算が起こります。この副次的効果を狙っているのが「メタ探究型学習」です(それ以外のことも狙って作られています)。

Webシステムマスターコースについて

コースは、6つの科学的事実、記憶の物理現象の観点から順番、構成、ワーク、コラムなどを用意しています。

さらに、6つの科学的事実を「実行するための様々な方針、原則、アイデア」を盛り込んで設計しています。

その結果、Webシステムマスターコースを受けている間に、「学び方」を学ぶことになります。

どんな分野でも言えることですが、「最終的には、独学する力」が差を分けます。コースを卒業し、コースで学んだ「学び方」を応用し、その後、ずっと新しいキャリアを積んでいけるようになることこそ、教育だと、私たちは考えています。

つまり「何かをできるようになるだけでなく、教えられた以上を継続して学び続けられるようになってもらうこと」が、私たち toiee Lab が大切にしている「教育目標の一つ」です。

この理想を追って、FILM学習理論、スクラム、オンラインワークショップなど、様々なことを行ってきました。

その集大成が、記憶の研究を組み合わせることによって、一気に前進したと感じています。

共に、たくさんのことを学びましょう。 どんどん記憶が溜まっていけば、わかることが増えていきます。

自分の成長を実感でき、きっと楽しいと思います。

それでは、コースでお会いしましょう。

コースの詳細は、こちら
追伸1

コースは「独学」ですが、私たちが「随時、フォロアップ」をします。つまり、「進んでいますか?」「今の状況はどうですか?」「どんなことに困っていますか?」「不安はありますか?」など、連絡をお送りします。

是非、つながっていきましょう。

追伸2

なお、スクラムという形で「長期に渡ってコミュニティを形成しながら、学んでいくプログラム」も開催します。

こちらは、コース受講者は「割引」でご招待いたします。まずは、コースで自習し、「チームで学びたい」と感じられたら、ご参加ください。

詳細は、準備が出来次第、お送りします。

toiee Lab

千里山東1丁目 16-24, 吹田市, 大阪府
Japan

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