外国語を学ぶ前に母語をしっかり身につけなさいと言われることがあります。
その場合の言語観は、思考は母語によって司るもので、外国語は思考を表現するツールに過ぎないというものでしょう。
一方で、言語と思考は切り離すことができないという考えもあります。その場合、外国語を話しているときは、その言語で考えているのであって、母語で考えたことを翻訳しているわけではないということになります。
実際、英語が得意な生徒ほど、どちらの言語で考えるかは、状況によってスイッチのように切り替わるという回答が多いようです。
二つの言語観のどちらが正しいかということを検証しようというつもりはありません。ただ、このような議論が起こること自体、外国語と母語のどちらにも習熟することが求められる時代であることを物語っていると言えるでしょう。
グーグル翻訳の精度が高くなるにつれ、外国語に変換されやすい言い回しを日本語で表現できる力が必要になってきます。しかしその日本語力を発揮するには、外国語の文法やニュアンスなどの特徴も知っている必要があるわけです。
AIにすべて任せることのできる時代が到来する前に、AIを活用して自分の言語スキルを拡張できる人とそうでない人の差がますます広がっていくのではないかと思われます。
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